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『クラッシュ』
先週の金曜日に、日比谷のシネシャンティで見ました。
クラッシュ公式サイトはこちら ミリオンダラーの脚本家、ポール・ハギスの初監督作ですって。なるほど。 なかなかの豪華キャストですよ。サンドラ・ブロック、ドン・チードル、マット・ディロン、ブレンダン・フレイザー、サンディー・ニュートン他。 でもこれも単館・ミニシアター系なのね。いい映画なのになぁ。 雀屋は、アメリカに行った事もなければアメリカ人の知人友人もいません。 ニュースで見る。映画でみる。本で読む。それだけしか知らない国です。 でもニュースになるのはそれが普遍的な出来事ではないからだし、映画や本は「根も葉もあるウソ」だと思うので、そういう物でしか知らないというのは、偏った情報しかもってないって事です。 だから、この映画に描かれた、人種差別が社会に落とす影は、どこまでがホントなのかが解りません。 ただ・・・、マッタクのウソではないから映画になるのだとは思うのです。 クラッシュの中に見る人種差別はまるで・・・。 そう。暗闇から聞こえてくるカサカサ言う音のようです。 音の正体は、子猫が紙袋にじゃれてるだけかもしれない。 はたまた暗殺者が顔を隠そうとひろげた新聞の音なのかも。 ただの風のイタズラにすぎないのかも。 死神の足元にまとわりつく紙くずなのかも。 でも、誰もが音のする「暗闇」を恐れて、音の正体をみようとしていないのです。 たとえば、潜入捜査中の白人警官が、黒人警官を射殺する事件がおきて・・・。 地方検事のリックはこの事件について会見をせねばならないのです。 潜入捜査官は「向こうから撃ってきた。防衛の為に撃ち返した」と証言。 でも深夜の事なので銃声を聞いた人はいても目撃者はいません。 撃ち殺しておいて、さも相手が何発も発砲したかのように情況を作ることはできます。 さらに、その黒人警官が乗っていた車は他人名義で、名義人は行方不明。 しかもその車のスペアタイヤの中に大金が隠されていたとなると・・・。 黒人警官が不正を働いていたーギャングの手先とか薬物の密売とかーの可能性が高くなりました。 しかしながら、潜入捜査官は、過去に2度(今回を入れると3度)黒人を射殺しているのです。 しかも今回の情況は、彼の証言が本当かどうかは証明出来ない情況。 検事はどうするでしょうか? 黒人を3度にわたって射殺した白人警官。彼は人種差別主義者なのかもしれない。 でも、たまたまそういう結果になっただけで、彼は自分の仕事を果たしただけなのかもしれない。今回は射殺された黒人警官が悪事に手を染めている可能性が高い。 潜入捜査官をよしとすれば(彼が黒人ばかり3度射殺したという事実があるので)検事は黒人票を失う事になると・・・。その逆になれは、白人票を失いかねない。 事件の真相は、「白人」が「黒人」を、という「人種問題」という暗闇のなかから聞こえるカサカサ音なのです。 この事件を説明にきた黒人刑事のグラハムは、検事の秘書から、昇進をちらつかせられたり(これはグラハムが相手にしなかった) 弟の事はいいのか?(弟はドロップアウトして車泥棒を重ねては警察の厄介になっているのです)と調査書類を突きつけられ、呆然と見詰める事になります。 彼らがグラハムに求めたのは事件の真相の説明ではなくて、有権者が納得しやすい説明でした。 暗闇の中の音の正体を見極める前に、そこから何が飛び出すかを恐れるゆえに、 本当のとこはどうなのか?を棚上げにして、自分が人種差別主義だと言われずに済む会見がしたい・・・。 この映画は沢山のエピソードが互いに影響しあって同時進行していきます。 別のエピソードでは・・・。 白人警官のライアンが保険事務の黒人女性を侮蔑する言葉をはきます。 (アメリカの保険制度は日本とは違っていて、自分が加入している保険が認めてくれないと、治療方法やドクターを変えることが、自由に出来ない。・・ようなのです。彼は父親のドクターを替えたいと、別な治療を受けたいが保険でできるかを聞きにきて、出来ないと言われるのです。) でもきっと彼は相手が白人男性であっても (病気で苦しむ父親とその看護に疲れている自分、そこから来る苛立ちに) 相手を攻撃する言葉を吐かずにはいられなかっただろうと思うのです。ただ担当者が黒人だったから、肌の色を引き合いに出すのがもっとも効果的な攻撃だったのでしょう。 しかし、確かにライアンは人種差別主義者でもあるのです・・。 同時に、通りかかった交通事故現場で(相手が黒人女性でも)命がけで救助活動もするのです。 ライアンの元パートナーのハンセンには、もっと哀しい厳しい形で、人種差別が落とす影に翻弄されてしまうし・・・。 ハンセンのエピソードは、彼は善き人だったのに、彼の前途を考えるとすごく哀しい。 その原因になったモノが「自分の中にもある、ライアンと同じ部分」であることもショックだろうし・・。 なにより、自分の良心に蓋をしきれるのかなぁ・・・。 だれもが、怖くて覗き込めない暗闇。恐ろしい物が隠れているとは限らないのに。 見ていて、悔し涙もあるし、安堵の涙もあるし。 言いようのない絶望もあり、赤い箱を選んだ娘さんに希望を見たりもし・・・。 アメリカの人種差別だけじゃないですよね。 日本だって、韓国や中国の人たちは見かけで判断できないから、それほど表立った事になってないだけで、在日の人への差別は存在するし。 江戸時代から引きずってる地域差別もまだまだ残ってる。 身体障害者の社会参加を考えてもそう。 とても考えさせられる映画でした。 小さなきっかけで善にも悪にも揺れる人間の弱さ。 差別の歴史と歴史がもたらす感情。 一度そういう物を、社会全体でリセットできたらいいのに・・・。 重たい映画なので、そういう映画が苦手な人や、たまにしか映画を見ない人にはお勧めしません。 でも、とてもいい映画です。 by suzume-ya3 | 2006-03-02 22:38 | 映画・ドラマ│
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