「運命を分けたザイル」
実際にあった山岳事故を元に、セミドキュメンタリーとでもいうのでしょうか。俳優が演じる再現ドラマに、本人がその時の様子や心理を語るインタビューの音声がかぶる。
俳優さんにセリフらしいセリフはほとんど無しです。
俳優さんが演じてるといっても雪山のシーンはセットではなくて、実際に事故のあったシウラ・グランデで撮影されたそうで、クレバスも本物だそうです。
氷壁をのぼる二人の様子を遠くから写したシーンは、俳優さんでもスタントマンでもなく、ご本人達がのぼっているとか。プロでなきゃのぼれないだろうなと思います。
雪山のシーンがすごい。
そそり立つ岩肌。その垂直の岩肌に積もった雪。稜線に庇のように張り出した雪が一気に崩れる様子。ドライアイスの煙のような雲。その雲が山肌をなでるように這い、天候が変わっていく様。クレバスの中の氷の世界。
雲の動きがまるで、意思のある生き物のようで、時には不気味に感じられるほど。
美しくて恐ろしい風景。
単館系の映画だし、ドキュメンタリーのような映画だし、一気にネタバレ行きます。
↓
細いロープでお互いを結んで、リュック1つで登っていく二人。
ほぼ垂直の氷の壁に、アックスを突きたて、アイゼン(靴のツメみたいなの)の、ほんの少しの引っ掛かりに体重をかけてのぼっていく様子は、一歩一歩確実にアックスとアイゼンを食い込ませる作業の繰り返しの地味なもの。
数百メートル・時には数十メートルのぼるのに何時間もかかる。
登るのもすごいが、おりる時はどうするんだろうと思っていたら、やはりおりる時の方が大変らしい。事故の80%は下山時におきているそうだ。
下山時、事故は起こる・・・。
ジョーが「アックスの刺さる音が何か変だ」と感じて、アックスを抜いて打ち直そうとした時、もう片方のアックスがぬけ、急斜面を滑り落ちるジョー。かろうじて転落は免れたものの、足を骨折。衝撃で骨が砕け、脛の骨が太ももの方へせり上がる・・・ほどの骨折。
平坦な所でもまともに歩けるはずがない状態の右足。
45メートルの長さのロープ2本を繋ぎ、まずサイモンが足場を確保してジョーの体重を支え、45メートル下まで、腹ばいになったジョーの体を滑らせる。そこでロープの結び目が金具にひっかかるので、ジョーは骨折していない方の足で足場を確保。ロープから体重を抜き、一旦結び目を解いて金具をくぐらせて結びなおし、さらに45メートル下にジョーをおろす。
そして今度はサイモンがジョーの所まで降りていく。・・・前例の無い単独救出。
そして運命の時が・・・。
吹雪で視界がきかず、声も届かない。斜面を滑り下るジョーが斜面の異変に気が付いても、それをサイモンに知らせるすべが無く・・・。ジョーの体は切り立った崖で宙吊りになってしまう。
ロープの結び目がきたのに、ロープにいつまでも体重がかかったまま。ジョーに何が起きたのかわからないまま、体感温度-60度の世界で、ジョーの体重を1時間以上も支え続けたサイモン。しかし新雪が張り付いた斜面の足場が崩れかかる・・・。このままでは二人とも墜落。
サイモンはロープを切断。ジョーは崖の下に口をあけていたクレバスに落ちる・・・。
ここから、ジョーの生還への戦いがすごい。
氷河の上を這って進み、岩の部分に来たら、装備を捨てマットを骨折した足に巻き、アックスを杖に岩場をジャンプするように移動。一歩毎に襲う激痛。
時に腹ばいで、時には仰向けで、時には足を投げ出して座った状態で、腕の力で移動し・・・。
あの岩まで20分で行こう。そんな風に小刻みな目標を定めて・・・。
絶望感や孤独感。時に諦めにも襲われ、錯乱状態に陥りながら・・・。
ほんとにすごい。
映画は、キャンプ近くまでたどり着いたジョーの、自分を呼ぶ声を聞きつけたサイモンが、彼を探し、見つけ、抱いてキャンプに戻る所で終わります。
生還を果たして、ロープを切断したサイモンの行為は、すごいバッシングを受けたそうです。
でも、ジョーは「自分がサイモンの立場でもロープを切っていた」と、サイモンを弁護したそうです。
ロープを切る・・・。究極の選択ですよね。そのままではおそらく二人とも死んでた。
怪我をした人間の上に45メートル上からもう1人の人間が落ちてくる。しかも二人して落ちる先は、もっと下のクレバスの中。
ジョーが生還できたのは、クレバスに落ちた時、雪の棚に上手く身体が引っ掛かって、クレバスの一番底までまっ逆さまではなかったから。でも二人で重なるように落ちてたら、その雪棚は二人の衝撃に耐えられたか・・。その雪棚で、止まる事が出来たか・・・。雪棚で身体が止まったとしても、ジョーの身体の上にサイモンが落ちてきて、ジョーが無事でいられるはずないし・・・。
「ロープを切るなんて」とサイモンを責めるのは「二人とも死ぬべきだった」というに等しいと言う気がする・・・。二人が生還できたのはジョーの強い精神力もあるし、偶然もある。ロープを切ったから二人が生還できた・・・これはまったくの結果論。
それでも・・・。
二人一緒に生きて帰れないなら、1人で生還するべきじゃない。
ロープを切るなって言うのは、そういうことだよね・・・。
俳優さんにセリフらしいセリフはほとんど無しです。
俳優さんが演じてるといっても雪山のシーンはセットではなくて、実際に事故のあったシウラ・グランデで撮影されたそうで、クレバスも本物だそうです。
氷壁をのぼる二人の様子を遠くから写したシーンは、俳優さんでもスタントマンでもなく、ご本人達がのぼっているとか。プロでなきゃのぼれないだろうなと思います。
雪山のシーンがすごい。
そそり立つ岩肌。その垂直の岩肌に積もった雪。稜線に庇のように張り出した雪が一気に崩れる様子。ドライアイスの煙のような雲。その雲が山肌をなでるように這い、天候が変わっていく様。クレバスの中の氷の世界。
雲の動きがまるで、意思のある生き物のようで、時には不気味に感じられるほど。
美しくて恐ろしい風景。
単館系の映画だし、ドキュメンタリーのような映画だし、一気にネタバレ行きます。
↓
細いロープでお互いを結んで、リュック1つで登っていく二人。
ほぼ垂直の氷の壁に、アックスを突きたて、アイゼン(靴のツメみたいなの)の、ほんの少しの引っ掛かりに体重をかけてのぼっていく様子は、一歩一歩確実にアックスとアイゼンを食い込ませる作業の繰り返しの地味なもの。
数百メートル・時には数十メートルのぼるのに何時間もかかる。
登るのもすごいが、おりる時はどうするんだろうと思っていたら、やはりおりる時の方が大変らしい。事故の80%は下山時におきているそうだ。
下山時、事故は起こる・・・。
ジョーが「アックスの刺さる音が何か変だ」と感じて、アックスを抜いて打ち直そうとした時、もう片方のアックスがぬけ、急斜面を滑り落ちるジョー。かろうじて転落は免れたものの、足を骨折。衝撃で骨が砕け、脛の骨が太ももの方へせり上がる・・・ほどの骨折。
平坦な所でもまともに歩けるはずがない状態の右足。
45メートルの長さのロープ2本を繋ぎ、まずサイモンが足場を確保してジョーの体重を支え、45メートル下まで、腹ばいになったジョーの体を滑らせる。そこでロープの結び目が金具にひっかかるので、ジョーは骨折していない方の足で足場を確保。ロープから体重を抜き、一旦結び目を解いて金具をくぐらせて結びなおし、さらに45メートル下にジョーをおろす。
そして今度はサイモンがジョーの所まで降りていく。・・・前例の無い単独救出。
そして運命の時が・・・。
吹雪で視界がきかず、声も届かない。斜面を滑り下るジョーが斜面の異変に気が付いても、それをサイモンに知らせるすべが無く・・・。ジョーの体は切り立った崖で宙吊りになってしまう。
ロープの結び目がきたのに、ロープにいつまでも体重がかかったまま。ジョーに何が起きたのかわからないまま、体感温度-60度の世界で、ジョーの体重を1時間以上も支え続けたサイモン。しかし新雪が張り付いた斜面の足場が崩れかかる・・・。このままでは二人とも墜落。
サイモンはロープを切断。ジョーは崖の下に口をあけていたクレバスに落ちる・・・。
ここから、ジョーの生還への戦いがすごい。
氷河の上を這って進み、岩の部分に来たら、装備を捨てマットを骨折した足に巻き、アックスを杖に岩場をジャンプするように移動。一歩毎に襲う激痛。
時に腹ばいで、時には仰向けで、時には足を投げ出して座った状態で、腕の力で移動し・・・。
あの岩まで20分で行こう。そんな風に小刻みな目標を定めて・・・。
絶望感や孤独感。時に諦めにも襲われ、錯乱状態に陥りながら・・・。
ほんとにすごい。
映画は、キャンプ近くまでたどり着いたジョーの、自分を呼ぶ声を聞きつけたサイモンが、彼を探し、見つけ、抱いてキャンプに戻る所で終わります。
生還を果たして、ロープを切断したサイモンの行為は、すごいバッシングを受けたそうです。
でも、ジョーは「自分がサイモンの立場でもロープを切っていた」と、サイモンを弁護したそうです。
ロープを切る・・・。究極の選択ですよね。そのままではおそらく二人とも死んでた。
怪我をした人間の上に45メートル上からもう1人の人間が落ちてくる。しかも二人して落ちる先は、もっと下のクレバスの中。
ジョーが生還できたのは、クレバスに落ちた時、雪の棚に上手く身体が引っ掛かって、クレバスの一番底までまっ逆さまではなかったから。でも二人で重なるように落ちてたら、その雪棚は二人の衝撃に耐えられたか・・。その雪棚で、止まる事が出来たか・・・。雪棚で身体が止まったとしても、ジョーの身体の上にサイモンが落ちてきて、ジョーが無事でいられるはずないし・・・。
「ロープを切るなんて」とサイモンを責めるのは「二人とも死ぬべきだった」というに等しいと言う気がする・・・。二人が生還できたのはジョーの強い精神力もあるし、偶然もある。ロープを切ったから二人が生還できた・・・これはまったくの結果論。
それでも・・・。
二人一緒に生きて帰れないなら、1人で生還するべきじゃない。
ロープを切るなって言うのは、そういうことだよね・・・。
by suzume-ya3
| 2005-03-09 00:28
| 映画・ドラマ