「大統領の理髪師」
雀屋、韓国映画はほとんど観た事がありません。
韓国映画は目下「純愛ブーム」らしいです。それもなんだか古臭いパターンの恋愛映画らしい。・・・雀屋の苦手なジャンルなのですわ。
そんな訳で、韓国の俳優さんも詳しくありませんが、「大統領の理髪師」の主人公、ソン・ガンホさんはどうみてもイケメンじゃないので、恋愛映画向けじゃなさげ(笑)なんて失礼な感想は置いといて。
でもなんかねー。すごい俳優さんかもしれないって思っちゃいました。
さて、この映画も観る人は少ないと思うのでストーリー紹介しちゃいます。パク・チョンヒ大統領が統治していた1960~70年代。軍事独裁政権下でのお話です。
ソン・ガンホ演じるソン・ハンモは、大統領官邸のある町で床屋を営む、極めて庶民的な男。「国のやることは正しい」と信じ、政治的には無知な小市民。
パク大統領には大統領警護室長のチャン・ヒョクスと、中央情報部長のパク・ジョンマンと言う2人の側近がいます。この2人は互いに何かと反目しあってます。
ソン・ハンモは、警護室長が情報部長の顔をつぶすために仕組んだ茶番に利用されたことから、大統領の理髪師に命ぜられてしまいます。
尊顔 (警護室長は大統領の顔を「竜顔」と言っていた) にキズでもつけたら大変と緊張の生活がはじまり・・・。権力者のすぐ近くにいながら、政治からは一番遠いところにいるような男が、厳しい政権下で、家族を大事に生きていこうとする。そんな話です。
本人はまじめなのに、政治状況を理解していないから、次々おかしなことを起してしまう。随所に笑える場面がたっぷり。
大統領暗殺のためにソウルに侵入した北のゲリラ達が、下痢をしていたために、下痢がマルクス病と呼ばれて、北のスパイと接触した証拠だと、下痢をしているだけで逮捕・拷問を受ける。圧政下ではそんな馬鹿げたことも起こります。20人の医師会が「ただの大腸炎」だと言っても、時の権力者は20人の医者の言う事など恐れるに値せずと、聞く耳を持ちません。
そんな騒ぎの中、ハンモの1人息子も下痢をしてしまいます。ハンモは息子がスパイと接触したなんて、ありえないことだとわかっているけれども、息子が下痢になったと、店に来ていた大統領警護室長に聞かれてしまい「マルクス病ではないことを証明してもらう」と警察へ息子を連れて行く。わずか10歳の子どものこと・・・。無実の息子が逮捕されるなんて夢にも思っていなかったはずの父親。
それが息子は逮捕されて護送車にのせられてしまいました。ハンモは息子がどこへ連れて行かれたのか探そうとしますが、行方がわからなくなってしまいます。
たった10歳の子どもをスパイ容疑で逮捕する。
それは、中央情報部長が、ライバルの警護室長の顔をつぶすべく、ハンモにスパイ容疑をかけようとしためでした。
電気ショックの拷問にかけられるハンモの息子・・・。しかし、息子のナガンは拷問をくすぐったいと感じるだけだったので、「自分が下痢になったのは父親のせいだ」と言う供述書に「はい」といいません。「なぜなら父は下痢をしていなかったからです」とナガンのナレーションがかぶります。
ハンモの町の人が、下痢をしていたためにスパイ容疑をかけられ、その拷問に耐え切れず、スパイであるはずがない友人を「彼に会って下痢になった」と裏切っていく・・・。
国のすることは正しいと信じていた人たちが、国によってウソを強制される悲しい場面です。誰よりもそれがウソであることは本人が一番わかっている事・・・。
マルクス病の騒ぎが収まってからも戻ってこない息子に、ハンモは警護室長に「息子を探してください」と頼みます。「警護室長に頼み事など!」と立腹し、ハンモに銃を突きつける警護室長でしたが、その数日後、情報部長が子どもを拷問している事を大統領の目前で批判。そのおかげか、数日後にナガンは釈放になりましたが、足がたたなくなっていました。
嘆き悲しむハンモ。誰が息子をこんな目にあわせたんだ。その怒りと悲しみに涙・・涙・・のシーンでした。
ハンモは足が立たなくなったナガンを背負って国中の漢方医を訪ね歩きます。
最後に訪ねた漢方医は「竜は数年以内に死ぬ。目を削って菊の茶に混ぜて飲ませよ」と言う、予言めいた治療法を授けます。・・・珍妙な治療法に呆れたのでしょうか。それとも訪ねるべき漢方医がもういなかったのでしょうか。息子に海をみせて「帰ろう」と言うハンモ。
「お母さんになんて言おう」
「”松葉杖を買って”と」
そして、数年後。
大統領は暗殺されます。弔問に訪れ遺影を見て予言を思い出すハンモ。
夜中、お酒を一気飲みし、オープンカーに据えられた遺影に近づくハンモ。
何度もためらって、震える手で遺影の黒目の部分を削り、粉をケースに収めます。
翌日、ナガンに、菊の花で入れた茶に目を削った粉を入れて飲ませるハンモ。
それから数日後。新しい大統領の理髪師として働かないかと言われたハンモは「もう、ご遠慮します」と断ります。
シーンがかわって、ハンモは大統領鑑定の理髪室で新大統領を待っています。
はさみを手に、椅子に座った大統領にとまどうハンモ。 (新大統領は波平さんみたいな頭だったんですよ / 笑)
「閣下。髪が伸びた頃、また来ます」
ナガンの声で「なぜそう言ったのか父にもわかりません。でも心が軽くなったそうです」と言うナレーションがながれ、ハンモの理髪店の前に黒い車から麻袋が放り出されます。
袋から痣だらけの顔を出したハンモは、満足気な微笑を浮かべています。
そして、ハンモがはじめて権力者に「NO」を言った翌日。
ナガンが支えられて立ち上がり、そろそろと足を踏み出し、おぼつかないながらも自力で歩きだしたのでした。
ラストシーンは二人が並んで自転車を走らせるシーンでした。晴れ晴れとした2人の笑顔。
政治に無知で、政治や権力から遠く、国のすることは正しいと信じ、歴史のおおきなうねりの中、家族と小さな幸せを守って生きていこうとした1人の男の、ささやかな生き様。
圧政下で庶民に降りかかる悲劇を、ユーモアにつつんで描きだした映画でした。
ラストのハンモの笑顔から、ほわーっとした温もりが伝わって来ました。
地味だけど、いい映画だったなあ・・・。
韓国映画は目下「純愛ブーム」らしいです。それもなんだか古臭いパターンの恋愛映画らしい。・・・雀屋の苦手なジャンルなのですわ。
そんな訳で、韓国の俳優さんも詳しくありませんが、「大統領の理髪師」の主人公、ソン・ガンホさんはどうみてもイケメンじゃないので、恋愛映画向けじゃなさげ(笑)なんて失礼な感想は置いといて。
でもなんかねー。すごい俳優さんかもしれないって思っちゃいました。
さて、この映画も観る人は少ないと思うのでストーリー紹介しちゃいます。パク・チョンヒ大統領が統治していた1960~70年代。軍事独裁政権下でのお話です。
ソン・ガンホ演じるソン・ハンモは、大統領官邸のある町で床屋を営む、極めて庶民的な男。「国のやることは正しい」と信じ、政治的には無知な小市民。
パク大統領には大統領警護室長のチャン・ヒョクスと、中央情報部長のパク・ジョンマンと言う2人の側近がいます。この2人は互いに何かと反目しあってます。
ソン・ハンモは、警護室長が情報部長の顔をつぶすために仕組んだ茶番に利用されたことから、大統領の理髪師に命ぜられてしまいます。
尊顔 (警護室長は大統領の顔を「竜顔」と言っていた) にキズでもつけたら大変と緊張の生活がはじまり・・・。権力者のすぐ近くにいながら、政治からは一番遠いところにいるような男が、厳しい政権下で、家族を大事に生きていこうとする。そんな話です。
本人はまじめなのに、政治状況を理解していないから、次々おかしなことを起してしまう。随所に笑える場面がたっぷり。
大統領暗殺のためにソウルに侵入した北のゲリラ達が、下痢をしていたために、下痢がマルクス病と呼ばれて、北のスパイと接触した証拠だと、下痢をしているだけで逮捕・拷問を受ける。圧政下ではそんな馬鹿げたことも起こります。20人の医師会が「ただの大腸炎」だと言っても、時の権力者は20人の医者の言う事など恐れるに値せずと、聞く耳を持ちません。
そんな騒ぎの中、ハンモの1人息子も下痢をしてしまいます。ハンモは息子がスパイと接触したなんて、ありえないことだとわかっているけれども、息子が下痢になったと、店に来ていた大統領警護室長に聞かれてしまい「マルクス病ではないことを証明してもらう」と警察へ息子を連れて行く。わずか10歳の子どものこと・・・。無実の息子が逮捕されるなんて夢にも思っていなかったはずの父親。
それが息子は逮捕されて護送車にのせられてしまいました。ハンモは息子がどこへ連れて行かれたのか探そうとしますが、行方がわからなくなってしまいます。
たった10歳の子どもをスパイ容疑で逮捕する。
それは、中央情報部長が、ライバルの警護室長の顔をつぶすべく、ハンモにスパイ容疑をかけようとしためでした。
電気ショックの拷問にかけられるハンモの息子・・・。しかし、息子のナガンは拷問をくすぐったいと感じるだけだったので、「自分が下痢になったのは父親のせいだ」と言う供述書に「はい」といいません。「なぜなら父は下痢をしていなかったからです」とナガンのナレーションがかぶります。
ハンモの町の人が、下痢をしていたためにスパイ容疑をかけられ、その拷問に耐え切れず、スパイであるはずがない友人を「彼に会って下痢になった」と裏切っていく・・・。
国のすることは正しいと信じていた人たちが、国によってウソを強制される悲しい場面です。誰よりもそれがウソであることは本人が一番わかっている事・・・。
マルクス病の騒ぎが収まってからも戻ってこない息子に、ハンモは警護室長に「息子を探してください」と頼みます。「警護室長に頼み事など!」と立腹し、ハンモに銃を突きつける警護室長でしたが、その数日後、情報部長が子どもを拷問している事を大統領の目前で批判。そのおかげか、数日後にナガンは釈放になりましたが、足がたたなくなっていました。
嘆き悲しむハンモ。誰が息子をこんな目にあわせたんだ。その怒りと悲しみに涙・・涙・・のシーンでした。
ハンモは足が立たなくなったナガンを背負って国中の漢方医を訪ね歩きます。
最後に訪ねた漢方医は「竜は数年以内に死ぬ。目を削って菊の茶に混ぜて飲ませよ」と言う、予言めいた治療法を授けます。・・・珍妙な治療法に呆れたのでしょうか。それとも訪ねるべき漢方医がもういなかったのでしょうか。息子に海をみせて「帰ろう」と言うハンモ。
「お母さんになんて言おう」
「”松葉杖を買って”と」
そして、数年後。
大統領は暗殺されます。弔問に訪れ遺影を見て予言を思い出すハンモ。
夜中、お酒を一気飲みし、オープンカーに据えられた遺影に近づくハンモ。
何度もためらって、震える手で遺影の黒目の部分を削り、粉をケースに収めます。
翌日、ナガンに、菊の花で入れた茶に目を削った粉を入れて飲ませるハンモ。
それから数日後。新しい大統領の理髪師として働かないかと言われたハンモは「もう、ご遠慮します」と断ります。
シーンがかわって、ハンモは大統領鑑定の理髪室で新大統領を待っています。
はさみを手に、椅子に座った大統領にとまどうハンモ。 (新大統領は波平さんみたいな頭だったんですよ / 笑)
「閣下。髪が伸びた頃、また来ます」
ナガンの声で「なぜそう言ったのか父にもわかりません。でも心が軽くなったそうです」と言うナレーションがながれ、ハンモの理髪店の前に黒い車から麻袋が放り出されます。
袋から痣だらけの顔を出したハンモは、満足気な微笑を浮かべています。
そして、ハンモがはじめて権力者に「NO」を言った翌日。
ナガンが支えられて立ち上がり、そろそろと足を踏み出し、おぼつかないながらも自力で歩きだしたのでした。
ラストシーンは二人が並んで自転車を走らせるシーンでした。晴れ晴れとした2人の笑顔。
政治に無知で、政治や権力から遠く、国のすることは正しいと信じ、歴史のおおきなうねりの中、家族と小さな幸せを守って生きていこうとした1人の男の、ささやかな生き様。
圧政下で庶民に降りかかる悲劇を、ユーモアにつつんで描きだした映画でした。
ラストのハンモの笑顔から、ほわーっとした温もりが伝わって来ました。
地味だけど、いい映画だったなあ・・・。
by suzume-ya3
| 2005-03-22 21:06
| 映画・ドラマ